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2016.02.07
「南向き信仰崩壊」で「北向き」人気


超高層マンションが各地で建設されているが、初期の超高層マンションから最新超高層マンションに住み替える人たちの間で、史上初めてとも言える革命的な出来事が起きている。それは、住宅の「南向き信仰」崩壊だ。住宅ジャーナリスト櫻井幸雄さんが報告する。

 ◇いままでの日本では考えられない現象

 日本で超高層マンションが増え始めたのは2001年ごろから。ちょうどそのころ、東京では湾岸エリアの再開発が進み、「都心マンションブーム」と呼ばれる現象が起きた。「超高層」の定義は地上60メートルを超えること。60メートルの高さであればだいたい20階建てだから、「地上20階建て以上が超高層」とも言える。

 その超高層マンション第1号とされるのが、住友不動産が1976(昭和51)年、当時の埼玉県与野市(現在はさいたま市)に建設した「与野ハウス」だ。その規模は、地上21階建て、高さ66メートルだった。

 地上50階を超える超高層が建設されている現在からすれば、21階建ては控えめな高さだ。しかし、当時は強度の高いコンクリートが使えず、住宅の各種設備が超高層に対応しているかどうかも手探り状態だったので、20階建て程度が精いっぱいだった。

 その後、建築の技術、設備仕様が発達し、40階、50階建ての超高層マンションが各地で建設されるようになった。都心部に超高層マンションが増え始めた01年から約15年が経過した現在、古い超高層マンションから最新の超高層へ住み替えを行う人が増え始めた。いわば、超高層族の移動である。

 超高層族の移動は、これまでの日本の住宅史になかった出来事。それだけに、いままでの日本では考えられない現象が起きている。

 どんな現象か、想像がつくだろうか--それは「南向き信仰の崩壊」である。

 古来、日本の住宅は、南向きを最善とし、南向き以外は嫌われてきた。それは、日本独自の風土の影響である。

 高温多湿の日本で、住宅はカビとの闘いを強いられてきた。そこで、理想的な住まいとされてきたのは日が差し込み、暖かい南風が入る南向きの家。北向きではカビだらけとなり、健康被害が発生しやすい。だから、嫌われ、疎まれた。

 家を買う人は日当たり良好な南向きを理想とした。窓の数が一戸建てより少ないマンション住戸では、特に「南向き信仰」が強まった。当初の超高層マンションも、南向きが人気を集め、「北側には住戸を設けない」という事例まであった。

 その南向き住戸を購入し、住み続けた人が今、どう思っているか。じつは、「もう南向きはこりごりだ」と話し、「今度は日が差さない住戸を」と南向き以外に殺到しているのである。

 南向きが敬遠される理由は、「超高層は目を遮るものがなく、日当たりが良すぎる」ことが原因。加えて、近年の日本は夏の暑さが激しい。猛暑日が続き、40度前後の高温を記録することもある。そうなると、日当たり良好の南向きは、暑さが半端なく、エアコンが利かない。エアコンをつけても熱風が出る、というような日もあるという。そうなると、遮光カーテンを閉じて、日差しを避け、住人は涼しいショッピングセンターなどに避難する、ということが起きている。

 ◇24時間換気で北向きでもカビは生えない

 これに対して、北向きや東向きは、夏の暑さを抑えられる。一方で、今は24時間換気装置というシステムが備わっているので、北向きであってもカビの心配はない。もう、南向きに執着する理由はなくなっているのだ。

 北向き住戸でも、反射光で室内は意外に明るく、窓から見える景色は順光でみやすい(南向きだと逆光になる)。だから、北向き住戸の評価がうなぎ登り。西向き住戸でも、赤外線を遮断するLow-Eガラスやエコガラスを使用すれば、夏の西日の暑さが和らぐ。そして、首都圏の場合、西向きならば富士山が見えるというケースが多くなる。

 西向きの場合、夏は多少暑くなるものの、冬は暖かく、「暖房はほとんど使わない」という長所がある。どうも、超高層マンションでは南向きより、北向き、西向き、そして東向き住戸のほうが旗色がよい。一度でも超高層マンションの南向き住戸に住んだことがある人ならば、夏の暑さを知っているので、南向き以外に飛びついてしまうのだ。

 夏の暑さが原因で「南向き以外を希望」の傾向が出ているなら、これもまた、地球温暖化の影響のひとつといえそうだ。

毎日新聞 抜粋