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2016.03.06
<バブル後最高値>都心15億円マンション登場の意義

昨年末から年初にかけて、極めて注目度の高いマンションが静かに分譲された。住宅ジャーナリスト櫻井幸雄さんが報告する。

マンションの名前は「パークコート赤坂檜町ザ タワー」。三井不動産レジデンシャルが売り主で、都心部の港区赤坂9丁目、東京ミッドタウンに連なる場所に建設される、地上44階建ての超高層タワーマンションだ。

 なぜ、注目されるのかは、二つの数字を挙げれば納得いただけるだろう。

 ◇バブル崩壊以降で最高水準の一般分譲マンション

 このマンション、最高価格の住戸が「15億円」であり、分譲された住戸の平均坪単価(3.3平方メートルあたりの価格)が「約1000万円」……いずれも、私が記憶する限り、バブル崩壊以降、一般に分譲されたマンションとしては最高水準となる。

 ちなみに、バブル崩壊後久々に10億円超のマンション住戸が登場したのは2003年の「ザ・ハウス南麻布」。約425平方メートルの住戸が12億7000万円で分譲された。その翌年、「パークマンション千鳥ヶ淵」の約335平方メートルの住戸が約13億円で分譲された。それ以降10億円超えの話題は出ていない。そして、今回の“15億ション”は広さ(専有面積)が約203平方メートル。バブル崩壊以降、最も高額のマンションと考えられるゆえんである。

 となると、「そんな高額のマンションが売れるのか」という疑問がわき、「中国人の爆買い」を思い浮かべる人もいるだろう。しかし、実際に取材すると、いずれも的外れ。想像でははかりしれない都心高級マンションの実情がわかった。

 ◇15億円住戸は最上階44階の北向き

 そんな高額マンションが売れるのかという疑問がわくが、すべて申し込みがあったという。全322戸のうち、一般に分譲された住戸は163戸(残りは地権者と事業協力者の住戸)。昨年11月中旬に第1期160戸が売り出され、全戸に購入申し込みが入った。続いて、今年1月に残り3戸を最終期として分譲。こちらもすべてに申し込みが入り、現状、購入できる住戸はキャンセルが生じた住戸のみとなっている。ちなみに、3月1日時点で136.83平方メートルの3LDKが5億8000万円で先着順販売中だった。

 購入者は個人情報なので公表されていない。しかし、いわゆる“爆買い”はないという。これは、都心マンションを幅広く取材する私の取材感と一致している。

 都心高級マンションに関して、「中国本土の人が投資目的で買っている」という声が多い。しかし、私が足で集めた情報では「中国本土からの購入者」も「純粋な投資目的の購入」も目立たない。香港・台湾を含む外国からの購入者はそれなりの数だが、多くは日本人。そして、“半投半実”の購入者が主流だ。

 “半投半実”とは、「とりあえず実需(実際に住む目的・セカンドハウス利用も含む)目的で購入し、遠い将来は貸したり、売ったりするかもしれない」という柔軟なスタンスを指す私の造語だ。

 “半投半実”の購入者は、「平均坪単価約1000万円」の価格表を見て、やはり「高い」と思うはずだ。100平方メートルの広さで3億円するわけだから、高いと思うのは当然だろう。確かに高いのだが、それでも欲しくなる魅力を備えている。

 ◇新国立競技場の隈研吾氏がデザイン監修

 デザインを監修したのは建築家・隈研吾氏で、施工は大成建設……「この組み合わせ、どこかで見覚えが」という人もいるだろう。そう、新国立競技場をつくるタッグなのだ。加えて、設計監修は、日本一の設計会社とされる日建設計。さらに、左官や照明、グラフィックアート、室内装飾の名工・有名グループを招集し、最高の技術によって仕上げられるマンションとなる計画なのだ。

 構造にも注目したい。免震構造と制震構造を組み合わせて、地震の揺れを軽減させ、長期優良住宅の認定も受ける。免震+制震+長期優良住宅の認定は、最新であり、羨望(せんぼう)の組み合わせと評価される。

 現在、アジアで分譲マンション価格が最も高いのはシンガポールといわれる。そのシンガポールで最高額物件の平均坪単価がやはり1000万円。「パークコート赤坂檜町ザ タワー」は、アジアの最高水準に達したわけだ。

 ◇世界が憧れるマンションが東京に

 しかし、それが「天井」ではない。シンガポールや香港では、一般向けマンションとは別に一部富裕層向けマンションのジャンルが存在し、その分譲価格は坪あたり3000万円に達している。100平方メートルの住戸で9億円という水準である。

 そこまでいくと、もう雲の上の話と感じるが、世の中の商品を見渡すと、多くのジャンルで“雲上ブランド”というものが存在している。10万円を超えるボールペン、300万円を超えるハンドバッグ、1000万円を超える腕時計、1億円を超える自動車、……それらを求める人がいるし、それらに憧れ、買える身分になりたいとがんばる人たちもいる。

 雲の上にそびえる商品には存在意義があるということだろう。世界的に見て憧れの対象となるマンションが東京に生まれる。それは日本の誇りでもある。

毎日新聞抜粋