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2018.10.23
もし自分のマンションがKYBだったら

KYBによるデータ改ざん問題が波紋を広げている。同社の制震ダンパーはマンションにも使われており、「購入したマンションの装置がKYBだったら、どうしよう」と不安を抱いている人が少なくないだろう。

 現在、KYBから公表されていることは少ない。この時点での論評は控えようと思ったが、不安を抱いている人も多いと考え、制震ダンパーに関する正しい知識をまとめた。

制震ダンパーは建物を支える装置ではない

 まず、分譲マンションでKYBの制震ダンパーが使われているのは、免震構造のものと制震構造のものだ。それ以外のマンションで、KYBの装置が使われているのは、耐震補強で制震ダンパーを後付けしたケース以外ない。

 KYB社製で、データを改ざんした制震ダンパーが使われているマンションにおいて「装置の交換」が生じた場合、比較的簡単な処理で済むのは免震構造のマンションだ。

 免震構造のマンションは基礎部分や建物の中間(2階とか3階といった下層部)に免震装置を設置している。免震装置は、天然ゴムと鉛などを重ね合わせた積層ゴムで構成されるもので、重たい建物を支えるために数多く設置される。

 大きな地震が起きたとき、マンションの建物は免震装置の上で揺れることになる。免震装置は柔らかく粘りがあるので、建物をゆったり動かし、揺れを軽減させる。これで、建物内で家具やテレビが倒れるといった被害を防ぐことができる。

 ただ、免震装置だけでは建物が揺れ続けるため、揺れを収束させる装置が必要になる。それが、今回問題になっている制震ダンパーである。

 以下は、私が以前撮影した免震構造の実物写真。黒い円筒形のものが、積層ゴムの免震装置だ。その横に、黄色い装置の一部が見える。

積層ゴムによる免震装置。右端に見えるのが制震ダンパーの一部。いずれも、参考例。筆者撮影
積層ゴムによる免震装置。右端に見えるのが制震ダンパーの一部。いずれも、参考例。筆者撮影

 黄色い装置の全体が下の写真。これが、制震ダンパーだ。お断りしておくが、以上2枚の写真は、私が10年ほど前に撮影したもので、制震ダンパーがKYB社製かどうかはわからない。そして、免震構造には他の方式もある。あくまでも、免震装置と制震ダンパーの関係を説明するための一例とご理解いただきたい。

免震構造で採用される制震ダンパーの一例。今回、問題になっているKYB製とは無関係の参考写真です。筆者撮影
免震構造で採用される制震ダンパーの一例。今回、問題になっているKYB製とは無関係の参考写真です。筆者撮影

 2枚の写真で分かるとおり、制震ダンパーは建物を支えているわけではない。支えているのは、積層ゴムの免震装置である。免震装置の横に取り付けられ、揺れを収束する補助的役割を果たすのが制震ダンパーというわけだ。

 この制震ダンパーの力が弱すぎると、揺れがいつまで経っても収まらない。

 逆に強すぎると、建物を固定してしまい、免震装置の効果が発揮できなくなる。そこで、適正な数値が決められているのだが、その数値に適合しない装置を出荷してしまった、というのが、今回問題になっている点である。

 だから、免震構造のマンションでは、建物の基礎部分や中間部分に取り付けてある制震ダンパーを外し、正しい数値の制震ダンパーに取り替える、という処置が一つずつ行われることになる。その際、建物内での作業は行われないので、生活への影響は少ないはずだ。

制震構造では、住戸内の壁を壊す可能性も

 生活への影響がより大きい、と思われるのは制震構造のほうだ。

 制震構造は、免震構造より簡単な仕組みで、地震による揺れを効率よく抑えようと考え出されたもの。こちらは、積層ゴムの免震装置は設置されない。その代わりに、建物の骨格部分に制震ダンパーをいくつも組み込む。

 制震構造で使用される制震ダンパーは、「免震構造用制震ダンパー」とは形が異なる。もっと、薄型で壁内に収まるようになっており、その参考例がタイトル写真として掲げたこの写真だ。

画像

この写真も、「制震ダンパーの一例」で、KYB社製ではない。そして、異なる形状の制震ダンパーがいくつも開発されている。あくまでも、「制震ダンパーはこのように薄い装置で、壁の中に収めやすい」ことを理解していただくための写真とご理解いただきたい。

 制震ダンパーは、壁の中に収めやすい。その結果、制震構造のマンションで制震ダンパーを交換しようとすると、「工事が面倒」という問題が生じてしまう。

 制震ダンパーを交換するため、壁を壊す必要がある。場合によっては、共用部分だけでなく、住戸内の壁を壊す可能性もありそうだ。そうなると、該当する住戸の住人は一時、別の場所に引っ越すことが求められるだろう。

交換は、売り主である不動産会社が責任をもって行う

 

 免震構造にしろ、制震構造にしろ、制震ダンパーの交換が必要な場合、工事はマンションの売り主である不動産会社の責任で行われる。不動産会社が交換を指揮し、住人が被った迷惑に対する補償も不動産会社が表に立って行うわけだ。

 補償を行った上で、不動産会社はKYBもしくはKYBに装置取り付けを発注した建設会社に対して損害賠償を求める段取りとなる。

 つまり、住人がKYBに詰め寄って、交換工事や補償を求めるようなことにはならない。もし、自分が所有するマンションに問題の制震ダンパーが使用されているとしても、その点は安心材料となるだろう。また、制震ダンパーは建物を支えるものではないので、正しいものに交換すれば資産価値に影響を及ぼすものではない。

 とはいっても、交換が速やかに行われるのか、交換されるまでの間に中古で売りたいときはどうなるのか……解決しなければならない問題はこれから数多く出てきそうだ。