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2019.12.06
タワマンの修繕コストを高騰させる“2大要因”

2000年代に入って建設ラッシュを迎えたタワーマンション(タワマン)の多くがいま、大規模修繕工事の時期を迎えています。前回「タワーマンションの大規模修繕工事の周期は?」では、その周期は『12年』が一般的とされているものの、そこには工事を受注する管理会社や施工会社側の事情があり、現実には17~18年目に先延ばして工事を行うタワマンが多いことをお伝えしました。

埼玉県川口市にある『エルザタワー55』は、1998年に竣工した当時は“日本一高いマンション”として話題になりました。高さ185m、55階建てで総戸数は650戸にもなります。




そのエルザタワーが第1回目の大規模修繕工事を迎えたのは、竣工して17年目の2015年3月。工期は丸2年におよび、総工費は約12億円だったことが明らかになりタワマンの貴重な大規模修繕事例として話題を呼びました。この総工費を総戸数の650で割れば、1戸当たりは185万円となりますが、さてこの金額に対する土屋さんの評価は?





「タワーマンションの場合、1戸当たりの費用負担が150~200万円の範囲に収まっていれば、十分、標準価格に入っていると言えます。ただし、タワマンと一般的なマンションを比較すれば、大規模修繕費はタワマンの方が3割程度は高くなります。総戸数が500戸程度の大規模マンションでも、中低層の建物なら1年程度で終わりますが、『エルザタワー55』は2年掛かりました。この工期の長さが、コストアップの要因になるのです」(土屋さん)





土屋さんによると、15階建てくらいまでの中低層のマンションの大規模修繕工事では、外壁全体を囲うように足場を組み、その外側に落下物防止用のメッシュシートを掛ける『枠組足場』と呼ばれる工法を用いるのが一般的。足場を組む作業は手間でも、一度組んでしまえば職人を大量投入して低層階から上層階まで一気に修繕を進められます。


一方、タワマンの場合は、超高層で建物の形状も複雑なため、屋上から吊り下げて電動で昇降させる『ゴンドラ』や、建物にレールを取り付けて足場を移動させる『リフトクライマー』を用いた工法が採用されます。『枠組足場』に比べれば、少人数で作業に当たらなければならず効率が悪くなるため、工事が長期化するということのよう。




また、工期が長いことに加えて、高価な設備が多いことも修繕費が高くなる理由です。





「タワマンには非常時に消防隊などが使う非常用エレベーターや停電時に電力を供給する自家発電設備、火災発生時に自動的に消火するスプリンクラー、災害時に屋上から避難するためのヘリポートなど、超高層ゆえに法律で設置が義務付けられている設備が多く、その分、修繕費がかさみます。ちなみに、自家発電設備は1機5,000万円~1億円するものも珍しくなく、30年程度で交換する必要があります。タワマンの場合、こうした設備の修繕費が大規模修繕費全体の6割におよぶというデータもあります」(

そこで問題となるのが、大規模修繕の原資となる「修繕積立金」です。




「修繕積立金はマンション居住者が毎月支払うもので、これを原資に将来の大規模修繕工事に備えますが、資金不足に陥っているタワマンも少なくないのが現実です」(土屋さん)




なぜそうなってしまうのか……。




「新築マンション販売時に、売り主が設定する修繕積立金が低すぎるのです。一般的なマンションと同程度の1万円弱に設定されているケースも少なくない。売り主が購入のハードルを下げるために、修繕積立金を極力抑えてローンと管理費を合わせた毎月の支払額を低く見せようとするのです。しかし、修繕積立金が月1万円程度では到底、大規模修繕工事の費用を賄えません。まだ築浅物件だからとこれを放置してしまえば、いずれ資金不足に陥ります」(土屋さん)




そうなると当然、適切な修繕を行うことができず、建物の劣化が進み、資産価値も下がります。こうした事態を避けるためには、「基本的に、修繕積立金を増額するしかない」とのこと。




売り主が“客付け”のために修繕積立金を低く設定するのはマンション業界の商慣習にもなっていることで、その安さは土屋さんが「異常」というほど。つまり、大規模修繕に備えて積立金を増額することは、タワマンにとっては避けられない道とも言えるのです。




しかし、戸数が数百におよぶタワマンの場合、それは簡単なことではありません。




「修繕積立金を増額するには、居住者で構成される管理組合の総会で決議にかけ、過半数の賛成を得なければなりませんが、値上げには反発が付き物。居住者の合意形成が難しいのです」(土屋さん)




さらに、積立金の増額が難しい背景にはこんな事情もありました。




「修繕積立金の徴集方法について、マンション分譲時にはほぼ100%『段階増額積立方式』が採られています。これは築年数が経つにつれて段階的に積立金を増額していく方式ですが、その場合、増額のたびに合意形成をとる手間がかかり、居住者の一部から反発を招くリスクもより高まってしまいます」(土屋さん)




こうして修繕積立金の増額がずるずると先延ばしにされ、いざ、大規模修繕が必要になったときに資金がショート。その結果、管理組合で修繕費用のローンを組み、その返済のために月々の積立金がかえって大幅に値上げされるというケースが少なくないそうです。 では、いったいどうすればいいのでしょう?




「竣工後、なるべく早い段階で長期修繕計画を見直し、50年、60年という“超長期”のスパンで大規模修繕を含めた資金計画を立てることが欠かせません。

当社がコンサルティングに関わった総戸数500戸のタワマンの事例では、長期修繕計画を見直すと60年間でおよそ100億円の積立金が必要でした。1戸当たりの換算では60年(720カ月)で2,000万円。月単位に換算すると約28,000円ですから、このタワマンでは少なくとも月3万円弱程度の支払いが必須になるということが分かります」(

こうして50年、60年のスパンで長期修繕計画を立て、そこから逆算して割り出した費用を積み立てていくことを『均等積立方式』と言います。





●修繕積立金の徴集方法
•;段階増額積立方式…築年数の経過に応じて段階的に値上げする方式。分譲時はこの方式を採るタワマンが大半だが、その後、増額するたびに居住者の合意形成をとる手間が生まれる。「将来的に資金不足に陥る事例が多い」(土屋さん)徴収方法でもある。
•;均等積立方式…事前に立てた長期修繕計画にのっとってある時期に積立金を一気に引き上げ、その後は同額を払い続ける方式。値上げ幅は大きいが、その機会は基本的には一度だけ。段階増額積立方式に比べれば修繕に資金不足に陥るリスクも格段に低い。




「均等積立方式が段階増額積立方式と大きく異なるのは、ある時期に修繕積立金を一気に値上げして、その後は同額を払い続ける点にあります。一度の決議で済むのがこの方式の利点の一つですが、同時に、先行きに不安のない財務基盤を構築することにもつながるので、タワマンの資産価値も維持される。実は、その利点に気づき、早い段階で『均等積立方式』に切り替えるタワマンも最近は増えているんです」